HGUC バウンド・ドック レビュー

 今回のレビューは、1/144スケール ハイグレードユニバーサルセンチュリー より、

“HGUC235 バウンド・ドック” です。


 “機動戦士Zガンダム” より、

ティターンズのニュータイプ専用可変モビルアーマー、

“NRX-055 バウンド・ドック” が、

ハイグレードユニバーサルセンチュリーで発売されました。


 いや、けっこう突然の発表だったので、驚きましたね。

 Z登場機のHG化というと、2018年12月のディジェ以来ですから、1年と10ヶ月ぶりです。

 当初は9月発売予定だったものが1月延期となりましが、とくにタイアップ要素もないこの時期によく発売してくれたものだと思います。

 複数のデザイナーが個性を出し合ったことで様々なデザインのMS、MAが誕生したZ。そのなかにあって、とくに異質な印象のあるバウンド・ドック。

 今になって冷静に見ると、よくもこんなデザインが採用されたもんだなぁ・・いや、もちろん酷いという意味ではないですよ。

 世界観的な意味でも、あの宇宙世紀という時代でどういうテンションで開発したらこんなモノができあがるのか・・(笑)

 まぁ、試作機、実験機ということですから、見ためには開発者の趣味が色濃く反映されているのでしょう、きっと。


 それでは、レビューしていきます。

 キットは素組み最低限の墨入れ、付属シールと一部塗装での仕上げです。


MS形態

 やはりその特徴的な顔付きのために、とくにSD系の作品などではしばしばイヌやキツネをイメージした姿にアレンジされることも多く、そのせいもあってバウンド・“ドッグ” と勘違いされることもありますが、ただしくはバウンド・“ドック” 。

 頭部以外にも、ひょろりとした胴体に左右非対称の腕部。腰にはボリュームのあるスカートを履いており、ところどころはフレームが剥き出しのままという、一度見たら忘れられないインパクトのあるデザインが、今回のキットでは見事に立体化されています。

 これまでバウンド・ドックのリアルスケールの立体物というとMS IN ACTION!!くらいしかなかった気がするので、非常に貴重ですね。ありがたい。

 では、各部をピックアップ。


頭部

 耳のように見える1対のアンテナはボールジョイント接続で可動します。

 モノアイも構造上は一応左右に動かすことができるのですが、例えば顎の下につまみがあったりはせず、動かしたい場合は顔面のパーツを外す必要があります。

 しかも、モノアイパーツ自体もかなり小さいのでなかなか面倒。

 また、モノアイはシール再現。丸みを帯びた造形の上からシールを張るというのも・・

 あと、額のイエローもシールです。


右腕

 一般的なマニピュレーターではなく、巨大なクローアームになっています。

 4本のクローはそれぞれ独立して可動するのですが、外側の大きいほうは手首と干渉するためあまり開けません。

 内側の小さい2本は途中にも間接があり、根元はボールジョイント接続なので少し引き出すことで角度も付けられます。

 確か、BB戦士ではこちらのクローにライフルやサーベルを持たせる仕様だったはずですが、こちらでも一応持つ・・というか掴むことはなんとか可能。

 実際にライフルを撃つこともできる、という説もあるようですが・・

 ちなみに、本来は肩と上腕の間に回転軸があるはずですが、動力パイプとの兼ね合いもあるのか、今回はその部分の回転はオミット。

 代わりに上腕と肘の間に回転軸が設けられています。

 でも、このサイズならデザインと可動の両立は不可能ではなかったと思うので、少し残念ですね。

 なお、ここ以外にも各部の動力パイプはすべて軟質パーツになっています。


左腕

 こちらは先端に通常のマニピュレーター(ハンドパーツ)があります。

 ハンドパーツはMGで一般的な可動式の親指以外の4指を差し換える仕様で、画像の平手のほか、ライフル持ち手とサーベル持ち手が付属。

 MA形態でモノアイおよび上面装甲となるシールドはモノアイユニットとその後方で分割され、それぞれ可動します。


スカート

 設定上は分厚い装甲ということになっていますが、今回はべつに二重構造とかにはなっていません。なので意外と薄い・・

 まぁ、軽量化などの必要もあったのかもしれません。

 後部のバーニアはそれぞれに可動します。左右の2つの基部はボールジョイント接続です。


脚部

 MA形態では格闘用のクローとなる爪先と踵が独立可動。

 膝は変形都合で逆向きにも曲げることができ、もちろん およそ180度の開脚も可能。

 ただしスカートがほぼ固定のため、脚部そのものの可動は優秀でも実際にはあまり活かせません。

 脛の装甲前面の小さなイエローの三角(下の2つ並んでるほう)はシールです。


MA形態

 あくまで可変MAなので、こちらが本来の姿ということなのかもしれません。

 お椀を引っ繰り返したような胴体から手が生えているという、これまたグリプス戦役当時ではあまり見かけない1年戦争時代のジオン製MAのようなフォルムです。

 グラブロを参考に開発されたという説もありますが、この姿を見る限りはなるほど、という感じです。

 あの時期に連邦系の組織がなにゆえグラブロを参考にしたのか? という疑問は置くとして(笑)。

 変形は至ってシンプルで、スカートの中にMS形態の上半身を折って収納し、左腕のシールドで蓋をするというもの。

 キットでは左のハンドパーツを外す以外、完全変形が可能ですが、上半身収納の際に耳(アンテナ)が引っかかりやすいので、これだけ外して後から付け直したほうが安全だと思います。

 また、左肩アーマーを180度回転させるのですが、これは本来の設定でもそうなのかな?

 最終的にシールドで蓋をするときにはシールドの前後にあるダボとスカート側の穴を合わせるのですが、ほかにロック機構はなく、あまりかっちり固定できる感じではありません。


 モノアイ

 シールド先端部にあるモノアイが、この形態でのメインカメラの役割を果たします。

 こちらのモノアイはクリアパーツ再現されていますが、正直キットをただ組んだだけではあまり目立ちません。

 ただ、内側にはそこそこ余裕があるので、ミライトなどを仕込める余地はあると思います。

 なお、こちらのモノアイは無可動(実際に動かないのかどうかは知りません)。

 周囲はフレーム成型色のままなので、ガンダムマーカーのブラックで塗りました。 今回唯一の塗装箇所となります。


クローアーム

 MS形態時の脚部。スカート側面の装甲が開き、そこから横向きに生えているようなかたちで展開されます。

 可動はそれぞれ根元と先(ピンクの部分)の2箇所。可動域はそれほどでもないです。


 側面から。

 MS形態の右腕がけっこうはみ出している状態・・こんなにはみ出すもんなの?

 なお、キットには透明クリアパーツ製のアクションベース5が付属。専用のアタッチメントを介してディスプレイが可能です。

 アタッチメントはMS形態時と共用ですが、2箇所ある軸のうち、中心線にあるものがMS用、外側にずれているものが一応、MA用です。

 画像のように右腕が干渉するので。


 そして裏面。

 うん。これは見ちゃいけない(笑)。

 某変形トイで言うところの、ガワ変形の局地です。

 せっかく分厚い装甲で覆っているらしいのに、下から狙われたら一発アウトですよ。

 主たる運用領域が宇宙空間だということを忘れてる!

 なお、先にも言ったようにスカートは積層構造でこそありませんが、裏面にはしっかりディティールが入っています。

 


中間形態

 上半身を収納し、しかし脚部はそのままという、まさしくMSからMAへの変形の中間形態。

 実際劇中でこの姿になった場面があったのかどうかは覚えていませんし、機体解説でもとくに言及されていませんが、とりあえず再現可能。

 ウォドムみたい。

 ただ、やっぱり右手が邪魔で歩きづらそうですね。


付属武装

ビームライフル

 エネルギーパックなどは内蔵式と思われる専用のライフル。

 少しわかりにくいですが、銃身根元上部の四角いセンサー部分はクリアパーツになっています。

 保持には先にも言ったように基本的に左の銃持ち手を使用。

 なお、説明書の解説では、通常のライフルより小型だが威力は同等・・とありますが、

どこが小型なのか?

 上から順にバウンド・ドック用、ゼータガンダム用、百式用です。

 逆にこれで威力が一般的なライフル並なら見かけ倒しもいいところなんですが・・

 非使用時、またMA形態次にはスカート右側面にマウントされます。

 いや、これも基本左手で扱うんだから、左にマウントしようよ(笑)。


ビームサーベル

 機体サイズに合わせて少し長めのデバイスを1本装備。

 ビーム刃はいつもの汎用パーツですが、そもそも長いのでとくに違和感はありません。

 保持には基本的に左の専用持ち手を使用。

 収納位置は不明となっており、今回のキットでもとくに設定されませんでした。

 なのでMA形態時には完全な余剰になります。


メガ粒子砲

 拡散メガ粒子砲とも。

 主にMA形態で使用されます。

 本来は左腕のシール内部に収納さえており、カバーが開き、クランク状のマウントアームによって展開され、さらに砲身が伸びる・・というギミックがあるのですが、今回は潔く(?)丸ごとオミット。

 カバーを一旦外し、そこアタッチメントを付けたメガ粒子砲を挟むという方式になっています。

 このサイズなら再現できたと思うんだけどなぁ・・

 もちろんMS形態時でも取り付けることはできますが、カバーのはめ込みが緩いのでポロリしやすい(メガ粒子砲なしでもしょっちゅう外れる)です。


比較画像

 ゼータガンダム([U.C.0088])と。まずMS形態で。

 確かコロニー内での初の変形シーン・・今回のパッケージアートにもなっているシーンですが、煽り構図での巨大感、異形感は非常に印象的でした。

 実際にこれだけのサイズ差があったんですね。

 わけのわからないMAが変形して、さらにわけのわからない姿になる・・しかもこれだけでかいとなると、そりゃあびっくりはするわな。


 MA(ゼータはWR)形態でも。

 変形時の運用コンセプトがまったく違うのは一目瞭然。


 サイコガンダムと。まずはMS形態で。

 主に操縦系にサイコミュ技術が用いられたNT専用の巨大可変MA、パイロットも同じく強化人間の少女(ロザミアは少女か?)と共通点の多い両機ですが、見ためは全然違うものになってますね。

 まぁ、サイコガンダムの場合はガンダムタイプと言い張ることで開発費を捻出していたとかいう設定もあったような・・でもそう思うと、よくバウンド・ドックみたいな機体が完成させられたな、とあらためて思う。


 MA(サイコはMF)形態でも。

 こちらも変形時の運用コンセプトはまるで違いますね。

 バウンド・ドックの場合は参考にしたグラブロのような格闘戦を意識したものですが、サイコのこれはもう完全に移動手段として割り切っている感じがしますね。

 もちろん、このままでも攻撃能力は備えているわけですが。機動性はないしね。


以下、画像

 スカートを除いた本体は細身のフレーム構造ということもあり、十分な可動性能があるのですが、結局半固定タイプのスカートを履いているがためにあまり派手なポージングはできません。

 足首もスイング幅はたいして広くないのですが、それぞれ3本あるクローが独立可動するおかげで6点支持で支えてくれるため、自立はまったく問題なし。

 左右腕部の可動には少々癖があります。

 とくに左はシールドが肩に干渉しがち。

 右のクローももう少し大胆に開ければもっと迫力があったんですけどね・・


 付属のアクションベースを使って。

 アタッチメントとベース支柱の接続はちょっと緩い印象。

 それと、やはり大型機ということもありますし、アクションベース5では高さが心許ない感じはあります。

 スカートはキットオリジナル解釈で前に跳ね上げられたりできれば、もっとアクション性が増したと思います。

 メガ粒子砲を展開。

 角度固定なのでイマイチ格好いい構えができない・・


 MA形態でも。

 メガ粒子砲とビームライフルの射角が揃ってないのが、ちょっと気になる・・

  しかし、可変機とはいえ、こういうフォルムの機体が1/144スケールで発売されたことは素直に嬉しいです。

 獲物を捕らえたカニのようだ(笑)。

 クローアームももうちょっと内向きに曲げられると、さらに遊びの幅が広がるんですけどね。

 膝のアーマーのスカートのうちがけっこう擦れて、とくに膝アーマーの素材が柔いので、気付くと擦り傷が付いてたりもします。


 中間形態でも。

 謎の建機型マシンというか・・こうなるともう宇宙世紀感はないです(笑)。


 VSゼータガンダム & 百式。

 初めて変形したシーン・・パッケージアートのモチーフになったシーンのイメージで。

 見ためのインパクトがむしろ災いしたのか、劇中で活躍したという印象があまりないですね。

 ロザミアは途中でサイコMk-Ⅱに乗り換えるし、ゲーツ機はパイロットもろともそんな彼女の敗北でうやむやのうちにフェードアウト。あげく、新訳劇場版ではそのへんのくだりが一切カットされているからゲーツは登場すらしない。

 だから結局、ジェリドの最後の乗機ということで、その呆気ないやれれっぷりばかりが印象に残ってしまう・・

 ある意味、出オチ感は否めないなぁ。


 以上、“HGUC バウンド・ドック” でした。


 なんの脈絡もない突然のHG化でしたが、個人的には今年のガンプラベスト1です。

 発売決定の報を聞いたときは、RE ハンマ・ハンマの時くらいテンションが上がりました。

 まぁ、そこまで好きな機体というわけではないんですが、やはりインパクトのある機体ですね。

 しかもいざ実際に組んでみると、なんということでしょう! ちゃんと立てるじゃないですか!!

 いやまぁ、当たり前のことなんですが、RE ハンマ・ハンマではひどくがっかりさせてくれたものですから、正直少し警戒していました。

 しかし、保持力は(今のところ)まったく問題なし。MS、MA両形態でしっかりポーズを維持できる!

 いくつかオミットされているギミックもありますが、造形、プロポーションは文句なしですし、ただ立たせておくだけでも十分な満足感があります。

 サイズ的にも大きめのパーツが多く、高額キットとはいえ思いのほかあっさり組めました。

 感覚的にはHGというよりREに近かったかも。まぁ、REがそもそもでかいHGという感じなんですが。

 そういえば、そろそろREの新作の話題が出ててもいい頃かなぁ・・


 さてさて、これでZ登場機(MSV由来を除く)のHGUCコンプリートまで残り3つとなりました。

 残るは、ハイザック・カスタム(隠れハイザック)

     ボリノーク・サマーン

     サイコガンダムMk-Ⅱ

 どれもなかなかリスキーな感じはしますが、あと2、3年のうちになんとしてくれるかな?

 バウンド・ドックのバリエーションでは、ゲーツ専用のグレーの1号機と、幻のジェリド機といわれるイエローの3号機は、どちらも忘れた頃にプレバンでしょうね。

 正直、たぶん色が違うだけなら今回のキットを塗り変えれば済む話です。

 とくに細かい色分けもないので、ランナー状態でスプレー塗装でもいけそうですね。

 ただ、この一般販売のキットがすでに(というか最初から)入手困難という・・ね。

 本当にもう、どうにかならんもんかな?

 基本的に定価以上で物を売ることは違法とか、そういうことにしてくれないとねぇ。


 といったところで、今回は終了。

 またのご訪問を。

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