HGUC トーリスリッター レビュー

 今回のレビューは、1/144スケール ハイグレードユニバーサルセンチュリー より、

“HGUC トーリスリッター” です。


 ゲーム作品、“機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク” より、

特殊システム “HADES” を搭載した次世代型モビルスーツ

“ペイルライダー” の改修機、

“AMX-018[HADES] トーリスリッター” が、

プレミアムバンダイ限定、完全新規型のHGUCで発売されました。


 先日、量産機である “ペイルライダー・キャバルリー” の予約も開始され、同時に “プロシェクト ペイルライダー” なる企画のスタートも予告された死の騎士系列機。

 トーリスリッターは、現状その最終形とされる機体です。

 一年戦争末期にジオン軍に鹵獲された連邦軍の特殊機、ペイルライダーがその後ジオン残党、さらにネオジオン軍において10年以上にわたり繰り返し改修されてきた、その成れの果て。

 トーリスリッターという名称は、ペイルライダーと同じ由来・・つまりは死の騎士を意味します。

 ブラックボックス化していた中枢システム、HADESを内蔵する頭部はほぼそのままに、その性能を発揮するために1年戦争当時のモノコック構造のボディはムーバブルフレーム構造のそれにそっくり置き換えられ、さらに武装などには最新の技術が盛り込まれたことで原型機とはまるで別物になっています。

 僕は関連のゲームはやっていなかったので、このトーリスリッターはもちろん、原型機のペイルライダーもHGキット化されなければ知ることもなかったかもしれません。

 ベースがジム系の特殊システムを積んだ機体で、メインカラーは青・・など、同じ外伝シリーズ(ゲームシリーズ)で誕生したブルーディスティニーと共通点が多いですね。


 それでは、レビューしていきます。

 キットは素組みに最低限の墨入れ、付属シールに一部塗装での仕上げです。


 HADESを内蔵する頭部メインユニットを除くとまったくの別物になっている・・という設定通り(?)、完全新規でのキット化となります。

 機体スペックとかも全然知らなかったので、改修機なんだから少なからずHGUC ペイルライダーからの流用パーツがあるのかと思っていたんですが、ポリパーツとサーベル用のビーム刃を除いて一切流用なしでした。

 それもそのはず、そもそも頭頂高が一年戦争期の標準サイズだった原型機の18mから22.8mになっています。

 トーリスリッターがこの状態で完成するのがシャアの反乱の直前のようで、武装の多くはハマーンのネオジオンで培われた技術が転用、あるいはそのまま流用されています。

 正直、こんな大型機(大型キット)だとは思っていませんでした。ちょっと小さいMGくらいのボリュームがあります。

 なお、原型機のペイルライダー同様、通常時とHADES発動時のどちらか一方を選択して組む仕様になっており、クリアパーツ製の頭部バイザー以外、カメラやスラスターフィン、ダクトの色の変化はシールを選ぶことで再現します。

 今回はカメラが赤、フィン、ダクトがゴールドに発光するHADES発動時を選択しました。

 ちなみに通常時はカメラはグリーン、フィンやダクトはグレーです。

 ボディはすべて新造・・つまりネオジオン製ではありますが、胸部のレイアウトや直線を組み合わせた外装のデザインなどは連邦的な雰囲気もあります。

 しかし腕部や脚部などのごてごて感はやはりジオンの血が入っている感じなのかなぁ。

 とくに既存の機体のパーツを流用したというようなことはなさそうです。

 ただヒールタイプの足は、あの当時の発想にあったのかなぁ・・(笑)

 ボディのサイズは先にも言ったように第2次ネオジオン戦争期の平均的なサイズまで大型化しているため、かなり小顔になっていますね。

 頭部は、メインユニットはそのままということですが外装は新造されており、原型機よりシャープな印象になっています。

 バイザーの奥にツインアイがあり、隈取り含めてシールでのカラー再現になります。

 ツインアイそのものは通常時、HADES発動時ともに白で、隈取りの色が変わる理屈はよくわかりません。

 カラーリングはほぼ原型機を継承。フィンやダクトを除き、ほぼパーツで色分けされています。

 そのフィン、ダクトにしても基本シール頼みではありながら、頬や胸部、肩(サブアーム側面)など、一部は塗装もしやすい分割になっていたりもします。

 今回は基本的シールに頼りつつ、形状的にシールが綺麗に貼れない部分のみマーカーで塗っています。色味がちぐはぐになってますがご了承を。

 背面。

 ウイング状のスラスターバインダーの位置にけっこう特徴があります。

 ハイパービームサーベルのホルダー兼用の可動式スラスターを始め、複数のスラスター、バーニアに大型のプロペラントタンクを備えたバックパックにもネオジオンらしさが詰まってますね。


 股間にもスラスターがあるため、HGUCでは珍しくスタンド用の専用ジョイントが付属します。

 また、腕の付け根や後述するサブアームの基部などは、接続軸の先端にダボを付け、切り欠きのある穴に差し込んだのち回転させてロックするという構造になっていますが、一方で脚部などはとくにそうした構造にはなっておらず、付け根のパーツは動かしていると緩みますし、膝関節も抜け易いです。あと腰部リアアーマーや背部スラスターバインダーのジョイントアームも軸が短く外れやすいので、いろいろ対策をしたほうがよいかと思います。


武装・ギミック

ハイパーナックルバスター

 ネオジオンの可変MS、ガ・ゾウムの主武装である大型のビームライフルをそのまま使用。

 なんでまたこんな取り回しの悪そうなのを選んだんだろう? もっと本体の見ために相応しいスマートな武器もあったろうに(笑)。

 キット的には割り切ったモナカ割りで、センサー部分はシール。とくにギミックもありません。

 保持には汎用の持ち手を使用します(というか、付属のハンドパーツはそれだけ)。

 今回のトーリスリッターのHG化で、ひょっとしたらガ・ゾウムのHG化もありえるか・・とか夢みたいなことを思ったりもしたんですが、この仕様を見る限りなさそうですね。

 普通に多少成型ランナーに含まれてましたしね。

 まぁ、ライトグレー成型のパーツはこのハイパーナックスバスターのみなので、これだけ流用することは不可能ではないとは思いますが。


5連装メガ粒子砲内蔵型シールド

 同じく、ネオジオンの可変MS、バウの装備をそのまま使用。

 なんで手持ち武装に可変機のものばかり選ぶんだろう(笑)。

 まぁ、こっちはわりと本体のイメージにも合ってますかね。攻防一体の装備でもありますし。

 どうせならライフルもバウから借りればよかったのに。余ってなかったのかな?

 表面の裏面の2パーツ構成でメガ粒子砲の砲口やネオジオン章は色分けはシールで再現。

 砲口はともかく、ネオジオン章はパーツ分けして欲しかったかなぁ。

 裏面のディティールもしっかり再現。

 手持ち用のグリップなどはなく、中央のジョイントパーツで前腕(肘の下)に取り付けます。左右どちらにでも取り付け可能です。

 これも、ひょっとしたらこの機にバウのREVIVEもあるか・・とか思いましたが、まぁないよね。


ビームサーベル

 標準サイズのビームサーベルは左右の前腕に1本ずつマウント。

 ビーム刃もいつもの汎用パーツです。


ハイパービームサーベル

 バックパックに2本をマウントする大型のビームサーベル。

 ホルダーパーツはボールジョイント接続で可動。先端にはスラスターっぽいディティールもあります。

 ハイパービームサーベルというと、やっぱりZZのイメージが強いなぁ。ネオジオンでこんなでかいサーベル持ってるMSいたっけ?

 設定上はどうなのかわかりませんが、とりあえず今回のキットではハンドパーツが汎用持ち手しかないので、普通に手で持つことはできません。

 後述のサブアームでのみ保持が可能。ダボでしっかり固定できます。

 ビーム刃はMGサイズのものが付属します。


サブアーム

 左右の肩アーマーに装備する簡易マニピュレーター。いわゆる隠し腕ですね。

 展開することで4本腕状態になります。

 基部がスライドし、根元で回転。さらに多数の関節でけっこうフレキシブルに動きます。

 先端のクローは開閉し、先述の通りハイパービ-ムサーベルを持たせることが可能です。


バックパック

 中央、と左右にそれぞれ2基、計6基のバーニアスラスターを装備する大型のバックパック。

 スラスターは中央のもののみ色分けされています。

 側面にはハイパービームサーベルのホルダー、ウイング状のスラスターバインダー、大容量プロペラントタンクを装備。それぞれ可動します。

 とくにスラスターバインダーはジョイントアームで接続され、かなり自由に可動します。

 ただ、各部の可動と干渉しやすく、また先にも言ったようにジョイントアーム根元がバックパックから外れやすいです。


インコム & トライブレード

 スラスターバインダーの縁に3基ずつ、計6基装備する有線式攻撃端末がインコム。

 いわゆる有線ビーム砲ですね。

 ネオジオンでインコムというとドーベン・ウルフですが、それよりも大型で形状も異なります。というかファンネルっぽいな。

 射出時のワイヤーはリード線で再現。

 好きな長さに切って使用します。

 そんなインコムの裏面には、ドライセンが装備していた特殊投擲武器、トライブレードをマウント。

 インコム射出に続けてトライブレード放出というようなトリッキーな攻撃も可能だそうです。

 ただ、キットではインコムとトライブレードの分離はできず(パーツとして取り外すことは可能)、3枚のブレードが展開した攻撃状態のトライブレードも付属しません。


 ちなみに、左の2つが本家ドライセン(HGUC)のトライブレード。左端が攻撃状態です。

 基本は同じですが大きさや全体のバランスが違っています。

 これは単なるアレンジなのか、それともドライセンのものから改良が加えられたということなのか・・?


比較画像

 原型機のペイルライダーと。

 同じくHADES発動状態を選択した空間戦仕様と並べてみました。

 一見してスケールが違うのではないか? と思ってしまいそうなサイズ差です。

 しかし、中枢部がそのままという頭部の大きさはそれほど変わっておらず、そのぶんトーリスリッターの頭身の上がり具合が大変なことに・・

 カラーパターンはほぼ同じで、上半身のデザインにはやはり面影が残っています。

 一方で下半身、そして武装類にはかなりの変化が見られますね。

以下、画像

 可動は標準的。

 頭部の接続はいつものポリパーツなので、あまり上を向いたりはできません。

 肩の接続はポリパーツとボールジョイントを使った定番の仕様なので、前方への引き出しや情報への跳ね上げはできませんが、ある程度柔軟には動きます。一方で肘は引き出すことで深く曲げることが可能。手首もスイングします。

 腹部も前屈ができるようになっているのですが、背中側にあるストッパーらしき突起が前屈の際にあっさり外れ、しかし元に戻そうとすると引っかかって戻らない・・という状況がけっこう起きます。

画像ではわかりやすいようにバックパックを外しています。

 股関節は前方にスライド可能。膝も脛裏のスラスターパーツを引き出すことで可動範囲が広がりますが、立て膝ができるほどではありません。

 足首のスイングもほどほどなので、接地性はイマイチ。

 腰部アーマーはリア含めてすべて可動します。

 本体だけなら片脚立ちもなんと可能ですね。

 なお、設定上はどうなのかわかりませんが、通常のビームサーベルは前腕にマウントした状態でもビーム刃を取り付けることができます。


 といったことを踏まえて、アクションポーズをいくつか。

 まず、ハイパーナックスバスターとシールドで。

 ハイパーナックルバスターはグリップより後ろにけっこうボリュームがあり、シールドは取り付け位置が肘側に固定と、どちらもあまり取り回しがよいとはいえませんが、肘と手首の可動でけっこう様にはなります。


 サーベル4刀流で。

 やはり今回の目玉はこれかな。

 サブアームが思いのほかよく動いてくれます。


 インコム射出!

 ジオングの有線ビーム砲とかも、原理的には同じものだと思うんですが、あれらが曲線的な動きをするのに対し、インコムのワイヤーは直線というイメージなんだよなぁ。

 途中にリールみたいなのがあって、そこで角度が変わる感じ・・をリード線を手で折って再現するのはけっこう難しいですね。

 リード線自体は硬めである程度の長さならインコムの重さに負けるということはありませんが、バインダー、インコムそれぞれにぐっと深く差し込んでおかないと、すぐに抜けたり、くるっと回転したりしてしまいます。


 武装全使用で。

 なんというか、わかりやすくヤバイ・・

 もちろん、普通のパイロットがこれだけの武器を一度に操れるわけもなく、そこはのちに強化人間の開発に繋がったというHADESシステムによるところが大きい・・というかほとんどなんでしょうね。


 以上、”“HGUC トーリスリッター” でした。


 宇宙世紀のガンダムシリーズ・・主にゲームやコミック作品において、一年戦争時代のMSで幾度となく改修を受け、長年にわたって乗り続け、戦い続けているとう例はけっこうあります。

 しかし、今回のトーリスリッターほどの変貌を遂げた機体というのはかなり希なんじゃないでしょうか。

 そもそも連邦系というのが珍しいような。大概がジオン系というイメージです。

 HADESという特殊システムを活かすため、ブラックボックスと化していた中枢部はそのままに、筐体となるMSの本体構造をそっくり入れ換えたという設定はけっこう理に適っていると思います。

 むしろ、見ためは1年戦争時代のままだけど、中身はまったくの別物・・というより説得力がある(笑)。

 ジムのお面を被ったガンダムがネオジオン製の新しいからだと武器を手に入れたというシチュエーションも面白いです。

 EXAM搭載のブルーデスティニーもそうですが、あくまで武装はシンプルで機体性能の向上を目指したらしい連邦制の原型機と、その改修にあたり、いわゆるNT用の特殊武装が複数盛り込まれたというところにも、連邦とジオンのNTに対する考え方の違いのようなものがあるのかなぁ・・とか。

 まぁ、時代が違うので一概には言えませんが。


 キットとしては、原型機と比較にならないボリュームにスタイリッシュなデザインがばっちり再現され、武装関連のギミック含め非常に作り応えのあるものでした。

 色分けに関しては、HADESシステムの再現のためにシール頼りになる部分は致し方ないでしょう。

 一部外れやすいパーツがあったり、インコムとトライブレードの分離ができないなど気になる部分もありましたが、2020年最終ガンプラ(あくまで個人的に)を飾るに相応しいものだったと思います。


 最初にも言ったように、量産機であるペイルライダー・キャバルリーの発売も決定、さらに年明けにプロジェクロト ペイルライダーの詳細発表と、また関連の展開は続く・・というか、始まってもいないようですが、このあといったいなにが発売されるのでしょうか? バリエーションまだあるのかな?

 それとも、MG化とかだろうか? 

 まぁ、MGでHADESシステムをどう再現するのかは見てみたい気もしますが、これまでの企画から考えるとシリーズを跨ぐ可能性は低そうですし・・

 ペイルライダーとは直接関係ないけど、相手役のクイン・マンサのHG化にも少しは影響してくれるといいなぁ。


 といったところで、今回は終了。

 またのご訪問を。

 


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