HG ビッグトニー レビュー

 今回のレビューは、1/72スケール ハイグレード より、

“HG ビッグトニー(ガガンバー ・メメンプー機)” です。


 オリジナルアニメ制作プロジェクト “PROJECT ANIMA(プロジェクト アニマ)” の第1弾としてこの10月から放送開始となったアニメ、“サクガン” の主人公親子が乗るマークボット、

“ビッグトニー” を、

バンダイスピリッツがプラモデルキット化。

 ハイグレードブランドより発売となりました。


 文化放送、DeNA、創通、毎日放送の共同企画によるオリジナルアニメ制作プロジェクト “PROJECT ANIMA” 。

 要は新たなオリジナルアニメを作っていこう! という企画のようですが、18年に「SF・ロボットアニメ部門」、「異世界・ファンタジー部門」、「キッズ・ゲームアニメ部門」の3部門で公募コンテストが行われ、それぞれの大賞に選ばれた作品を20年以降に順次アニメ化していくという流れで進んでいます。

 コンテストでは小説や脚本などの文章、漫画およびイラストといった絵での応募以外にも企画書や動画まで、様々な形式のエントリーフォームが用意され、さらにに小説投稿サイトや漫画アプリからの投稿も可能だったそうです。

 そうしてこの度、晴れて第1弾としてSF・ロボットアニメ部門から “サクガン” の放送開始となったわけですね。

 原案となったのは、もちろんPROJECT ANIMA、SF・ロボットアニメ部門に応募された戌井猫太郞氏作のSF小説 “削岩ラビリンスマーカー” 。

 実は大賞ではなく準大賞だったそうなのです(大賞は該当なし)が・・

 記念すべき第1弾から繰り上げ当選みたいなかたちはどうなのかな?

 原作者的にもなんかモヤっとするのでは?(大きなお世話か)

 まぁ、個人的には好みの世界観の作品なので、十分楽しませてもらっています。

 ただ、ちょっと各エピソードの駆け足感が強いのと、思ってたほどにロボットが活躍しないのが・・まぁまだ半分ですしね。

 とりあえずOPは楽曲、映像ともにけっこうツボ。

 なお、PROJECT ANIMAの残る2部門でもそれぞれ大賞が選出されており、それらも近いうちにアニメ化されていくものと思われます。


 それでは、レビューしていきます。

 キットはパチ組みに付属シールでの仕上げです。


 まずパッケージを。

 変形ロボットでもあるビッグトニーの両形態が描かれ、機体名称のロゴもハッタリの利いた、迫力あるよいパッケージなのですが・・

 ビッグトニーという名称、そして税込み定価5720円という価格から、HGとはいえ大判のパッケージだろうと勝手に思い込んでいたので、ちょっと拍子抜けでした。

 縦横のサイズは2~3000円台の標準的なHGキットと変わらず。

 まぁ、厚みは多少あるのですが、同時期に展開している境界戦機のHGシリーズの倍以上の価格ですし、正直割高感は否めません。

 86のキットでも同じような感覚はありましたが・・パーツ数で換算するとそれくらいにはなるんだろうか?


ロボットモード

 頭部に相当するパーツがなく、すんぐりとした卵形のボディの正面に顔らしき意匠がある、そしてそこからわりと武骨な手脚が生えているという、決して格好よいとはいえないデザインですが、なんとも愛嬌があって可愛らしいです。

 これが履帯走行のビークルモードに変形するわけですから、気にならないわけがない!

 というかまったく予備知識がないときに新作キット情報としてTwitterに流れてきた画像に反応したら、なんとアニメの公式アカウントからフォローされてしまった(?)ので、そうなったらもうアニメは見なきゃいけないし、キットは買わなきゃいけないじゃないですか。

 いや、仮にフォローされなくとも見たし、キットもたぶん買ったとは思うけども(笑)。

 話を戻して。

 キットは、アニメ劇中では3DCGで描かれるビッグトニーのデザインが忠実に再現されています。

 まぁ、そこはむしろ3D描画だからこそ忠実に立体化できた、ということなのかもしれませんが。

 パッと見は鈍重そうではありますが、劇中では軽快に走ったり跳ねたりする機体構造もしっかり再現されており、とくに肩周りや変形機構を有する膝関節部分などはなかなかに複雑な構造で可動性も優秀です。


 背面。

 背中にはほぼ普通のリュックにしか見えないバックパックを装備。側面にはロケットブースターが付いています。

 最近のバンダイ製キットとしては珍しく、フレームなどに使われているグレーのパーツはABS製です。

 カラーリングに関しては一部成型色では再現しきれていない部分もありますが、各部のライトなどにはRGのリアスティクデカールと同質の金属光沢のあるシール、脚部外装などのマーキングは曲面に追従して粘着力も高いシールで再現されるのでとくに塗装しなくても十分満足できる仕上がりになります。

 スケールは最初に言ったように1/72。

 同じく秋アニメとして放送されている境界戦機のHGキットシリーズと同一スケールで、さらに言うと旧ゾイドなどとも同じなので絡めても面白いと思うのですが・・せっかくそこそこ大きめのスケールだというのに、コクピットハッチの開閉ギミックなどが採用されていません。

 サクガンはもちろんキャラクターもまた魅力的な作品なので、同一スケールのフィギュアも付いていたらぐっとプレイバリューが増したと思うだけに、少々残念ですね。その点は境界戦機シリーズも同様。


 ちなみに、サイズ感はこれくらいになります。

 乗せているのはコトブキヤのHMMゾイド(もちろん1/72スケール)のパイロットフィギュアです。


 目のように見える正面のライトには通常のシールのほかにジュエルシールも用意され、どちらかを選んで貼る仕様になっています。

 今回はジュエルシールを使用。

 立体感があり、光も上手く反射してくれるので生き生きとした雰囲気が出ていると思います。

 なお、赤丸で囲んでいる部分はビークルモード時に展開するライトの蓋なのです(キットでは差し換え方式)が、このパーツがかなりの確率でポロリします。

 あと、腕も肩間接への接続がボールジョイントということもあって外れやすいですね。


 正面、ヘッドライト部分の防御用に降りるアイシャッターは外付けで再現。

 庇にあたる部分に下からはめ込むかたちですね。

 本来は抜けていると思われるスリット部分はディティールの上からシールを貼る仕様になっています。

 また、シャッター自体のカラーも本来はブルーグレーなのですが、キットではほかの外装と同じ水色での成型になっています。

 

 腕部は前腕部分がスライド伸縮します。

 シリンダー部分のグレーはシールでの補完となっています。


 先端のマニピュレーターは3本の指がそれぞれ(根元だけですが)可動。

 ただこの外側の黄色いパーツも外れやすいですね・・


 ドリル状態への再現は差し換えで。

 ただこのドリルパーツ、一旦付けると外しにくい・・

 また、外装の小型ライトも起こすことが可能です。


 腕部に内蔵されているアンカーの射出状態を再現可能なパーツが両手分付属。

 画像は片方分です。

 前腕の外装を一旦外し、射出器を挟んで再度取り付け。

 ワイヤーにはリード線を使用しているので、自由に表情を付けられます。

 先端のニードルも小さいパーツなので、重さで腕部がへたることもありません。


ビークルモード

 脚部を展開することで前後左右分割型履帯で走行できるビークルモードに変形可能。

 全高がおよそ半分ほどになり、全体に丸いことも相まってカメのような、またカエルのような可愛らしいフォルムに。

 前後にもそれほど伸びた印象はなく、わりとみっちりとまとまった感じに。

 特徴的なデザインの履帯は軟質素材のベルト状パーツで再現されています。

 バックパック側面に装備していたブースターは後方に向けられています。

 

 変形は差し換えによるものという説明でしたが、実際にパーツを差し換えるのはマニピュレーター(これもドリル状態にするだけなので、厳密には変形のための差し換えというわけではない)と先に言ったボディ側面のライト(展開状態にするため、一旦パーツを外し、ライト部分をはめ込んでから向きを変えて再度付け直す)のみ。

 ライトも、これくらいなら差し換えじゃなく普通に開閉できるようにできた気もするのですが・・まぁ、ほぼ完全変形と言って差し支えありません。

 単純に言うと、腕部を後ろに回して、脚部を伸ばして前に向けただけなんですけが、その脚部の変形がなかなかに変態的なので一連の過程を見ていただきましょう。

 こちらがロボットモード時の脚部を内側から見たものです。

 脚部は、太股と脛が同じ形状の履帯ユニットになっていて、それが内側につづら折りにされたフレームだけで繋がっているという構造なのですが、

まずそのフレームを伸ばします。

 そして足・・

 爪先にあたるパーツを矢印のように動かして足首装甲を収納します。

 そこまでした横に向けた状態がこちら。

 ここから、

爪先と踵を矢印のように動かしてます。

 次に、太腿前後の外装パーツを開きながら付け根部分のフレームを起こして、

そのまま、ほぼ180度前向きにたたんでしまいます。

 そして、外装その他各パーツの位置や角度を調整して、脚部の変形は終了です。

 というわけでビークルモード側面図。

 ロボットもそうなのですが、脚部のフレームにはとくにロック機構などはないため、とくにビークルモードでの各パーツの位置決めがなかなかに厄介です。腕部も同様。

 というか、どういう配置が正解なのかイマイチわかりません。

 もっとも、これは前後左右の分割履帯であらゆる地形での高速走行を可能とするため、あえて自由度が高い構造になっているのだ・・と解釈しています。

 とはいえ・・こんな貧弱そうなフレーム、しかも片側だけの連結なのにロボットモードで跳んだり跳ねたりして大丈夫なんだろうか?


比較画像

 先ほどから話題に上げている境界戦機のHGシリーズより、外伝作品の主人公機メイレスビャクチと。

 全高はほぼ同じ。

 さすがに横幅はビッグトニーのほうがありますが、価格ほどの差は感じられません(メイレスビャクチは税込み2640円)。

 さすがにこの2機だとデザイン面でまったく共通点はないですが、境界戦機は敵方の3勢力それぞれに属する機体(アメイン)のデザイン含めた方向性がけっこう違うので、このビッグトニーも新たに現れた第4勢力の量産機だ、と言われたら納得してしまう感じもあります。


 ビッグトニーをビークルモードにして。

 さらに並びの違和感がなくなったかも。


 1/72スケールといえばやはり旧ゾイドということで、HMMの最新キット、レブラプターと。

 劇中に登場する謎の存在、カイジュウに見立てるには小さ過ぎますかね。

 スパロボだとみんなSサイズ枠かな。

 しかしゾイドと並べてみると、あらためてコクピットの開閉とパイロット搭乗ギミックは採用してほしかったなぁ・・と。

以下、画像

 独特のプロポーションと構造のため、確かにクセはありますが、可動性そのものはかなり優秀。

 人型としてできてほしいポースは一通りこなせます。

 ただ、接地性はあまりよろしくなく、自立が少し難しいときも。

 股下にスタンド用の3㎜穴があるので、補助的に汎用スタンドを使う場面が多かったですね。

 立て膝も可能。

 というか、変形にも用いられる脚部フレームは可動点が多いのでわりと柔らかい動きが可能になっています。

 ただ、ロック機構がないために動いてほしくないところが動いてしまう、ということもあるんですが・・

 また、肩にあたるフレームもかなり自由に動かせるので、腕部もダイナミックに振り回すことができます。

 まぁ、腕自体は外れやすいですが・・


 アンカー射出!

 胴体(コクピット部分)は左右回転はできますが前後(上下)スイングはできないので、頭上を見上げる、という格好はできないんですねぇ・・

 股関節から動かしたら、後ろ向けに倒れるしね。これくらいの角度でギリギリ・・


 ちょっとスタイリッシュに。

 アイシャッターを下ろすと、まったく違う雰囲気のロボットになりますね。

 アンカーを組み合わせたら、なんとなく忍者ロボっぽい。

 そして、実は意外と脚が長いんですよね。


 ビークルモードでも。

 壁も登っていくような感じ。

 4つに分割されている履帯がある程度自由に動くので、多脚戦車のような雰囲気もあります。

 腕部だけ展開するのもまたいい感じ。

 こうなるとカニっぽくも見えますね。

 背中にキャノン砲とかも積んでみたくなる。


 絡めて遊べる相方がいない・・たぶん今後も来ないと思うので、比較画像でも並べた同スケールのキットたちと。


メ「そんなスピードじゃ置いていかれるぞ! 背中に乗れ!

 アメイン1機くらいは楽に運べる馬力はありそう。

 ただ掴まるところがないので上に乗ってるほうは大変そうですが・・


ガ「無人機なんざ、このビッグトニーの敵じゃないぜ!

 次の次くらいのスパロボで実現しそうな光景。

 たまにはこれくらいのレベルの機体ばかりが出るスパロボもやりたい。


メ「ワイヤーで絡め捕る!

 このまま振り回して投げ飛ばすのかな。


 その日、突如コロニーを襲ったカイジュウにより、その親子の運命が変わった・・

 でもその後カイジュウあんま出てこないな・・(現在6話まで視聴)


 以上、“HG ビッグトニー” でした。


 ガンプラ以外のバンダイ製プラモデルをレビューするのは初めてだったかな? アニマギアは別として。

 当然ですが。定番のガンプラとはまったく違う構造で新鮮でした。

 脚部フレームの組み立てはなかなかに厄介でしたが。ずんぐりと武骨ながら可愛らしい劇中デザインが完全再現されており、差し換えと言われていた変形もほぼほぼ完全変形だったり、バンダイの技術力がいかんなく発揮されたキットになっていると思います。

 見ため以上によく動きますし、なによりキャラクター性の強いその外見はどんなポーズをとらせるのも楽しい。ただ、ちょっとパーツのポロリが多いかな。

 あと、やっぱりコクピットの開閉ギミックは盛り込んでしかるべきものだったでしょう。

 近日発売されるROBOT魂版ではコクピットハッチの開閉、さらに付属のガガンバー、メメンプーのフィギュアを搭乗させることもできるそうですね。

 サイズ的にはこのHGキットよりも一回り大きい、高さ15㎝。価格は税込み8800円とのこと。そっち買ったほうがよかったかな? とかちょっと思ってしまいました。

 やはり価格を考えると、今回のHGキットはねぇ・・

 もっとプラモデルならではの遊び方・・たとえば、バンダイ製キットでも30MM、30MSのように(どこかのなにかに似た)組み換え前提のキットシリーズも好調なわけですから、このキットもそれらと組み合わせ可能な拡張性があったなら・・まぁ、版権が絡むものだと難しいのかもしれません。

 あとは、シリーズラインナップですねぇ。

 同時期に放送されている同じロボットアニメの境界戦機ではアメイン以外のサポートマシンもキット化され、なかなかに充実したラインナップが予定されています。

 一方のサクガンからは、今のところこのビッグトニーのみ・・

 おおよそ半年先までの新商品が発表される昨今の状況的に、少なくともアニメ放送中にほかの機体が発売されることはないでしょうから、なんとも寂しいことです。

 放送終了後でもいいから、ユーリのマークボット(名前わからん・・)とザクレットゥのバイクは発売してほしいなぁ。


 といったところで、今回は終了。

 またのご訪問を。

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